訳 1997年6月30日
弦楽器を購入する場合、いろいろわからないことがあると思います。たとえばオールドと新作はどちらを買ったらいいか、特に楽器が高価な場合はリスクが伴うことになります。本書をあらかじめ読んでおいてもらうことにより、購入上の間違いを減らすことができるでしょう。
オールドと新作はどちらがいいか、は常に悩まされる課題です。18世紀にストラディバリやガルネリやアマティなどによってつくられたクレモナの楽器を持つことは家を買うよりお金のかかることです。すぐれたイタリアの楽器の多くは絶えず使用されてきたため、修理を重ねて痛みやすくなっています。したがって、常に専門家のケアが必要なため、維持費用がかかります。しかしその美しい音色のために、演奏家は新作よりそういったオールドを求めるのです。
もし、あなたがオールド楽器を購入しようと思うならば、次の点に考慮しなくてはなりません。
まず、楽器のコンディションがきわめて良いことが必要です。これは、実用性と楽器としての価値を得るための条件です。
修理を必要としたり、まずく修理されている楽器はそのまま使用することができませんし、また気候や季節の変化が多大な影響をもたらしやすいのです。またこういったオールド楽器がバーゲンで出ることがありますが、修理などでお金が実際には多く必要となってしまいます。
次は、それが本物なのかどうかということです。スクロールをすげ替えたものや、表板をオールド仕立てのものにとりかえたものなど、”にせもの”の楽器は無数に出回っています。もし、買おうとしている人が、その製作者特有のスタイルを熟知していないのであれば、見分けは付きません。オリジナルでないスルロールは楽器のの音にはほとんど影響しないでしょうが、楽器の価値としては影響されます。表板の交換は、価値もさる事ながら、音色に多大な影響を与えていることでしょう。
またニスについてもよく見際ねばなりません。もし楽器が150年から200年を経ているのであれば、全体また部分的なニスの塗り直しが行われているはずです。オリジナルのニスを保護するために薄い透明なニスを上塗りしている楽器もあります。ニスの塗り直しというのは、オリジナルのニスが取り除かれてしまうため、楽器のオリジナリティと統一性を欠いてしまうということで最悪のシナリオです。またその場合に使用されたニスがたまたま良ければ、そのことは誰にもわからなくなってしまうでしょう。ニスの塗り直しは、音色に影響を与えますが、ニスも寿命があるので、適切なニスで塗り直しが行われれば、悪くなることはないでしょう。
ネックのプロジェクション(neck height from top of the belly)は、バイオリンでは20−21ミリ
、ビオラは24−26ミリ、チェロは62−68ミリです。
ネックのアライメントは? (ネックはf孔の中心にありますか。)
ひび割れがありませんか?
ひびがある場合、それは板の裏まで届いていませんか? またそれは裏側から発生していませんか?
魂柱付近にひびはありませんか? (とくに裏板は望ましくありません)
指板の表面の仕上げが適切で、あらゆるポジションにおいて弦が触ったり、びびったりしないことが必要です。
糸巻き部分にひび割れはありませんか。
糸巻きはスムーズに回せ、また確実に止まりますか。
弦を弾いたり、はじいたりしたとき、変な音はしませんか。(板のはがれがないか分かります。)
駒は正しい位置に表板としっかりすきまなく立てられていますか。(駒は通常f孔の内側の溝の中心に
おかれます。足の底は表板のカーブにあわせてあること。駒の裏側すなわち緒止め板がわが垂直に立っていること)
ナット(ネックの一番上にある弦が当たる部分)は、適切な高さですか。(ファーストポジションのひとさし指を押さえたとき、固い場合は高すぎることが原因です。)
緒止め板の位置は正しいですか。(最も低いところで1ー2ミリのすきまが必要です)
新作楽器は、現代の楽器製作技術の進歩により、その人気が高まっています。多くの優れたバイオリン製作学校があり、すぐれた製作者を送り出しています。彼らの楽器がコンサートなどで使用されて名声を得ると、その価格もあがるのです。こういった新作楽器は丈夫であり、頻繁に使用することができますが、今までに培った音色をもっているわけではないので、演奏家はこういった新作楽器で発揮できる個性を持つ必要があります。すべての演奏家がそうできるとは限りませんが。新作楽器はオールド楽器をできるだけ模倣して作られます。また、見るからに古そうな外観に仕上げられることもあります。また、まったく新しい仕上げとニスにより作られるものもあります。有名な製作者によるオールド楽器と比べても、優れた現代の製作者によるコピーは価値があります。とくにオーダーメイドで作られた場合は、調整などの面においてもメリットが得られます。
まったく新しい製作学校が、低価格の楽器を作りだしています。それは中国にあります。彼らは、かなりの高い技術をもっています。彼らの多くは個人的に工房を持っています。当初はばらつきはありましたが、最近は水準が上がり、他のメーカーより、安い価格で良い楽器を得ることができます。注意することは、それらが、現代高価格で取り引きされているいイタリア製作者のラベルをつけて販売されることがあるということです。またその上でバーゲンで売られたりしていることです。あまりにも安すぎる現代イタリアン楽器にも注意してください。現代バイオリン製作者一覧(encyclopedia of contemporary violinmakers ("Twentieth Century Italian Violin Makers", by Marlin Brinser; or "Liutai Italiani di Ieri e di Oggi", by Niccolo Gualtiero)にのっていないような名前がラベルにあったら特に注意してください。信用できるディーラーであれば製作された国を正しくいうことでしょう。
このガイドがよりよい弦楽器を購入するときの役に立つことを望みます。
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